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​第六部  原子野  (1952年)

第一幕 原子野

道なき道に 凪の風

天地照らす 灼熱よ

瓦礫に輝る 硝子片

訊ね歩けど 誰知らず

嘔吐の匂いの 荼毘の煙

現世朦朧 我誰ぞ

焦土に失せた 子と正気

ありやなしや 嬰児よ

夢か現か 声亡き子

幻背負い 子守唄

ひとり佇む あわれ母

虚 空蝉 狂女なり

第二幕 差別・フラッシュバック

幸福(しあわせ)を刻んだ月日

信じつつ 思い人の 母と会う

開口一番ヒロシマと 

2人の仲を引き裂いた

寄るなと疎み蔑む眼

隠し徹せと諭す声 心遣いが恨めしい

誰も分からぬと心閉じ

 

安寧暮らす 日々の中

ふとしたことで蘇る

雷 原爆 震える身体 8月6日灼熱よ

煙たなびく煙突の 見えぬ恐怖3月11日

ヒロシマ ナガサキ フクシマよ

引き戻される68年

「水をください」唸る声

まっ黒焦げの灰人間 

皮膚を引き摺る幽霊行列

丸々膨れた川面の屍

「助けて」とすがる手を払い

恐れ慄き 逃げ去った

供養三昧したとても

懺悔拭えず頭(こうべ)垂れ

ごめんなさいと手を引いて

ずるりと剥けた腕ぬめり

白骨 露わとなりにけり

悪夢にうなされ飛び起きる

拭い去りたい過去の傷

忘れられぬ記憶の悔恨

未だ消えぬ未だ消えぬる

三幕 祈り仰ぐ空に星光り

      

彼岸

     

荼毘

   

祈り仰ぐ空に星光り

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