第四部虹について
第四部虹(1951年)には日本兵と米兵捕虜・黒い雨が降った後に現れた虹などが描かれています。それまでの第一部幽霊・第二部火・第三部水は、被爆者に焦点がおかれていました。廣島には米兵捕虜がおり、自国の原爆により死んでいることを知り、敵も味方もなく殺してしまう原爆に丸木夫妻は核兵器への警鐘を訴えたのです。その悲惨な死者たちの上へせめてものなぐさめに虹を描いたのです。
原発に関しても、原発の危険性を訴え、原発分の電気料金支払いを拒否し、電気を止められ自家発電で抵抗しました。
《観客感想文》
「美しい舞のお姿を通して表れた美しいお心に、涙がむせぶほど感激致しました。日本舞踊や太極拳、インド舞踊や東南アジア舞踊、そして西洋バレエまでの調和を感じさせ、東洋と西洋の神秘的な音楽及び静けさの間(ま)のブレンドで、自然の風の音と風鈴の音色の背景に、あらゆる地球や宇宙の要素が表現されたかのような勝楽寺の神聖な雰囲気の舞台で、全人類に呼び掛けた原爆や原子力の危険の恐ろしさや戦争の切ない無意味な存在がしみじみと深い感銘を与えられました。一緒にさせて頂いた学生さんや友人もとても感動されまして、大変貴重な機会に恵まれたと言われました。」
第一幕 黒い雨
中空に火の玉が爆発し
白熱的閃光が走る
火焔は光幕状をなし
四方へと拡がる
黒煙の柱 立ち昇り
白黒赤黄の彩雲左右に渦巻く
きのこ雲
爆風
トタン板は紙のように剥がれ
ドラム缶は巻上げられ
電車は転がり
紙は遥か彼方へ飛んで行く
竜巻 大火災
家の下敷きの母炎上す
吹き飛ばされ枝に
吊るされたままの死者たち
夕立のような豪雨 肌を刺す
ミ ズ ミズ 水を……ください
と求める民に
コールタールのような黒い雨
飲めば死ぬ 水をあげなかった
と懺悔する被爆者の苦悩
原発 空気汚染 水質汚染
放射能体内被曝
第二幕 日本兵と米兵捕虜
崩れた兵舎 骸骨のワルツ
炎に舞う
焼け爛れた皮膚を射る
寒さ 脱毛 蛆 虚脱
原爆ブラブラ症
米兵捕虜 志高く入隊
飛行兵パラシュート
木に引っかかり 捕虜収容所
12時間の強制労働
満たされぬ腹
トラック移送
「殺せ!」と罵倒され
相生橋で十字架に
投石される米兵捕虜
九州大生体解剖米兵捕虜の死
第三幕 虹
灯火とともに馬は蘇り
死者を導く
鎮魂 感謝
献水
抱擁 ゆりかご
天使の梯子
金色の光粒子