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2011.11.20

​夢の木ひろば

今回の作品は小学5年生が書いた作文を題材に創作しました。若い木と老木のほのぼのとする対話とともに四季の移り変わりを見事に書いています。そんな素敵な作品の良さをお伝えできれば幸いです。森林浴にいるような気分にお導きできたらと思っております。春夏秋冬をお楽しみください。

春 芽吹き

夏 昆虫たち

秋 秋風/枯葉

冬 老木の死

生命の息吹

『木の一生』島崎脩嘉作

 

春のある日、山の中で木の芽が出た。その芽は、だんだん成長し、何十年かけてやっと大きな木になった。それが自分だ。周りを見渡すと、横にもう一本の木を見つけた。自分とその木は山のでこぼこしている場所にいる。周りを見たら、草や花が自分たちの下にいる。

ある夏。自分の体の一部に虫たちが集まっている。なぜだろうと思った。よく見てみると、体の中から変な液体が出ている。虫たちは、その液体を舌でなめて食べている。朝になってもまだ食べている。ちょっと時間が経つと虫たちは飛び、どこかに行ってしまった。

 夏の後半、ふと気づくと自分の体に変な丸い実がついている。横にいる木に話しかけた。

「な、これなに。」

とたずねると、横にいる木は答えた。

「それは、どんぐりという実さ。」

と言い、自分は、

「へえ。」

と言った。これが横にいる木との最初の会話だった。

夏がすぎた。自分と横にいる木は、いつも通りにしていた。春と夏にいた、草や花たちは、もうちょっとしかいない。夏に自分の体に止まっていた虫たちもいない。いるのは飛ぶ虫や鳥しかいない。空を見上げると雲の形がおもしろい。横にいる木に話しかけた。

「な、空を見上げてみな。雲の形がおもしろいぞ。」

横にいる木が言った。

「ああ、おもしろいな。」

と言い、自分とその木との会話が何時間か続き、空はもう暗くなっていた。

その次の日。どんぐりが地面に落ちていた。

「おい、どんぐりが落ちているぞ。どうすればいい。」

すると横にいる木は、

「ああ、それでいいんだ。」

と言った。自分は、

「なんで。」

と言い、横にいる木が、

「もう、秋なんだよ。」

と言った。自分は、

「え、秋って、秋ってなんだ。」

と言った。横にいる木は大笑いした。大笑いしながら自分にこう言った。

「秋も知らないの。」

自分は、

「しょ、しょうがないだろ。」

と言い、こんな話が何時間か続いた。

次の日から、葉っぱというものが赤っぽい色や、黄色っぽい色になり、どんぐりと同じように落ちていった。横にいる木に言ったが、昨日と同じように言われた。

そして、秋の後半。自分と横にいる木はおたがいを見た。そしておたがいの表情を言い合った。自分は悪い表情ではなかった。だが、横にいる木は寒さにこごえていた。

冬が来た。もう雪が降っていて、自分の体に雪が積もっていた。すると、しかが来て、自分の体の皮を食べて、森の中へと消えた。自分はちょっと寒くなった。横にいる木に話しかけたが返事がない。なぜかと思った自分は大声を出してこう言った。

「どうしたんだあ。」

それから何日かたった。横にいる木は、倒れてしまい、自分はひとりになった。

それから何日か経ち、もう春になった。倒れた木を見ると、木から変なものが出ている。よく見ると、芽だ。自分はその芽が大きくなるまでずっと待っていた。何十年かたち、その芽は大きくなり木になっていた。自分はその木に春・夏・秋・冬のことをすべて話した。そして、横にいる木と同じように倒れ、自分からも芽が出た。

(2009.11)

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