top of page

2006.10.7

ねむの木サロン

月 兎
 

今夜は満月です。昔から日本では月の中の影を“兎”に見えると言います。そのいわれをご存知でしょうか?今回の舞は、2つのお話しをもとに創作しました。

 

ジャータカ物語:316「兎の話」

今昔物語:天竺部「三つの獣菩薩の道を行じ、兎身を焼ける語」

(出典は大唐西域記・七・婆羅痆斯国)

 

『むかし、天竺に兎、狐、猿の3匹がおりました。この3匹は前世で犯した罪が重く、このような姿に生まれてしまいました。3匹は誠の信心を起して菩薩の道を行おうとしておりました。それを観て帝釈天は3匹を試そうと、今にも倒れそうなよぼよぼのお爺さんに姿を変えて現れ、「私はもう年老いて疲れてどうにもならない。あなたたちは哀れみ深いと聞いた。どうか私を養ってくれたまえ」と話した。「それは望むところ。私たちが養いましょう」と喜び勇んで3匹は食べ物を捕りに飛んでゆきました。猿は木に登り栗、柿、梨等の木の実を、狐はあわび、かつお等の魚を持ってきました。それをみてお爺さんは「実に哀れみ深い心なり。これ既菩薩なり」と感心した。ところが兎は東西南北探し求め歩くが何もない。野山にも行くが私が食べる草など人間は食べないし……。兎はお爺さんの元へ戻り、「今すぐにおいしい食べ物を持ってきます。木を拾い、火を炊いて待っていてください」と言う。猿は木を拾い、狐は火を取って来て焼きつけた。しかし兎は何ももってこない。それをみて猿と狐は、「何もないじゃないか。空言を言って、木を拾わせ火をたかせ、温まるつもりなのか」と言うと「私のこの身を焼いて食べてください」兎はお爺さんが止める間もなく、火に飛び込んでしまいました。兎は焼け焦げ黒くなりました。お爺さんは帝釈天の姿に戻り、兎の慈悲深い行いを世界中の人に見てもらえるように月の中に籠めた。月にかかる雲のような物は兎の火に焼けた煙だといわれている。』(今昔物語より)

 

ジャータカ物語では猿、狐、かわうそ、兎の4匹が出てきます。火に飛び込んだ兎は、帝釈天の神通力で冷たい炎となり焼けなかった。他にも少し異なる部分はありますが、兎の哀れみ深い心を忘れぬように~という終末は同じ。

 《ジャータカ物語は、お釈迦様の前世集》

bottom of page