鎮魂の舞 献水 広島公演
2025年9月20日(土)
11:00 14:00
旧日本銀行広島支店

演出・構成 和泉 舞
舞 和泉 舞
演奏 設楽 瞬山
衣装・フライヤー 和泉 舞
協力 鎮魂の舞広島実行委員会

第一幕 風
一九四五年八月六日
涼風よ懐け 廣島
崩れ欠けた建物
ぽつりと 生き証人なり
焦げ臭く 死臭漂う荒野
目前も 背後も 左も右も
遥か彼方 焼け野原
爆風が掻っ攫う
おはよう
お隣さんとの会話
物干しのオムツ
ちゃぶ台の茶碗
子どもと母の笑顔
家
同級生と歌う軍歌
見交わす先生と学徒の瞳
ささやかな日常
毎朝の光景
何が何だか分からず呆けて
走り回る母 狂女の如し
生き絶えた幼子背に 立ち尽くす
放心の抱擁
半焼けの母と稚児
風よ吹け 灼熱をさらえ
風よ吹け 蹴散らせ蠅を
風よ吹け 耐え難き痛みを
涼風よ懐け 死者の願いを
涼風よ懐け 生残者の涙を


第二幕 火
瓦礫の校舎
埋もれた級友
潰れた家屋
動かぬ瓦礫
朝が闇に
おかあちゃん
動かぬ柱
おとうちゃん
誰か助けてください
暗闇に 煙る赤
浮かび上がる惨状
助けを求める
手 手 手
おねえちゃん
忘れ得ぬ声
おにいちゃん
火の手が迫る
紅蓮地獄 廣島
失くした友情
燃ゆる声
消えた幼子
呻く夜
黙す朝
電車に突っ立つ骸骨
バスに座す白骨
黒き骸 天を射す


第三幕 水
水 水と群がる 防火水槽
プールに浮かぶ学徒たち
川面の人 人 丸々と
水をください
赤焼けた背に
水をください
焼け溶けた手足に
水をください
滑り削げた体に
水をください
赤裸々な骨に
水をください
襤褸の皮膚に
水をください
水をください
水をください
水を 水 みず
この子だけでも みず を
水 水 みず を く だ さ い
死んでもいいから
み ず み
あげられない懺悔
あげた懺悔
刺さったガラスに 甘雨を
蠢く蛆に 篠つく雨を
赤き肌に 愛雨を
群がる蠅に 雨風を
雨乞う眼 天仰ぐ
水をください
水を


第四幕 光
苦渋の土に眠る魂よ
一瞬の高熱に消えた魂よ
彼の刻は終に
時を越え
迷宮の淵から いま此処へ
暗闇の溝より いま此処へ
光の舟の船手
光芒道標に 歩みだし
光の柱へ 集まれり
無念観念 解く羽衣
辛苦の楔 解くシルク
螺旋を描く オーロラに乗り
天へ 天へと誘われ
安らぎの里へ 招かれし
至福の光へ 懐かれよ
安らかに 安らかに

